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ひとりうた

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スパイダースでボーヤをしていた男、古市幸弘と再開して、その歌唱力に感嘆した井上堯之が「いつか新曲を書いてやる」と約束してから3年の時が流れた。そして古市のレコーディングから1年足らずでこの世を去ったため、事実上の最後の作曲となった。古市の強い希望により「旧友」も併録。2曲の演奏は井上堯之自身のギターによるものである。

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3年目に果たせた約束 〜一本の電話から〜

 あれは2014年・・・頃のことでしたでしょうか。埼玉県所沢市でのライブを数週間後に控えていた時でした。用件はライブの席はまだ残っているかどうかの問い合わせでしたが、奈良からの電話の声は言います。「実は僕、スパイダースのボーヤ(付き人)だったんです。あの赤いバスも運転してました」。リアルタイムのスパイダースファンである私は、ワーゲンの真っ赤なバスを直ぐに思い浮かべたのでした。
 それが古市幸弘との最初の出逢いでした。所沢市のライブには奈良から駆け付けてくれ、もちろん井上にも繋ぎましたが、そう、数十年ぶりの再会でした。。そして井上が歌った「旧友」。古市はすっかりこの歌に惚れ込んでしまいました。
 その後、奈良・ビバリーヒルズでのライブの時、古市は沢山のお客様を引き連れてライブ会場に現れたのです。聞けばホームグラウンドにしているカラオケ店の常連さんとか。そしてその後の打ち上げで、そのカラオケ店にお邪魔したのです。そこで聴いた古市の歌。その歌唱力の高さに井上はすっかり感激してしまい、その場で「俺、お前に曲を書いてやる。必ず書いてやる」と約束してしまったのです。それ以前から「もう新曲は書かない」と井上が言っているのを聞いていた私は内心〝あぁあ、どうしよう・・・〟と思ったものでした。
  古市との再会から3年近くが過ぎました。曲は書いていません。奈良へ行く度に気になりながらも、本人が書かないのではどうしようもありません。ところが3年近く経った頃、どうにもこうにも断れない状況での新曲の依頼がありました。3曲の候補が出来ました。そのうちの1曲を依頼者に渡したのですが・・・。一番最初に書いた曲は、どう考えても古市幸弘に歌ってもらうのにピッタリだ、私は思ってしまったのです。
 そして井上のコンセプトに基づいた歌詞が出来、オケも井上自身がギターを演奏して完成。東京のスタジオ「サウンドシティ」で歌入れの録音を経て、この「ひとりうた」(「旧友」も収録)がリリースされました。
 このCDには2曲のカラオケバージョンも収録されております。3年目にして約束を果たすことが出来、井上もホッとしたのではないでしょうか。

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